
「派遣会社に登録して気になる派遣先を見つけたけど、面接ってあるの?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。
派遣登録後に派遣先を志望する場合は、面接ではなく顔合わせが行われます。
そこで本記事では、派遣社員の面接が実施されない理由をご紹介するとともに、顔合わせの際に押さえておきたいポイントについて解説します。
「本命の派遣先で働きたい!」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
派遣の面接は法律で禁止されている?
派遣先企業が派遣社員に対して面接を行えない理由は、“労働者派遣法”という法律によって、“派遣先が労働者を特定することを目的とした行為”が禁止されているからです。
労働派遣法とは、派遣労働者の保護と労働者派遣事業の適切な運営を目的として、1985年に制定された法律です。
ここからは、労働者派遣法のなかから、派遣社員の面接に関わる内容について詳しくお伝えします。
労働者派遣法による規制とは
労働者派遣法第26条6項によって、特定目的行為(労働者を特定する行為)は禁止されています。
これによって、派遣先企業が派遣社員を受け入れる際に面接を実施したり、履歴書を送付させたりするような選考は実施できないのです。
面接が禁止されている理由
労働派遣法で面接が禁止されている理由は、派遣元と派遣先のそれぞれの企業で雇用関係が重なることを防ぐためです。
派遣社員として働くには、まず派遣元となる派遣会社に登録して雇用契約を結びます。
もし派遣先が面接などの選考を行ってしまうと、派遣先とも雇用関係があるような状態になり、派遣元と派遣先で重複します。
そのような状態になることは、職業安定法44条で禁止されているため、派遣先企業では面接が実施できないというわけです。
例外として面接が行われるケース
上述の通り、基本的に派遣社員の面接は実施されませんが、紹介予定派遣で働く場合など、例外もあります。
紹介予定派遣とは、派遣先の企業に直接雇用されることを前提とした働き方です。
派遣期間中に派遣社員と派遣先の双方が合意すれば、直接雇用に切り替わる仕組みです。
紹介予定派遣の場合は、のちに正社員や契約社員になる可能性を考慮し、派遣社員と派遣先のミスマッチを防ぐために、面接の実施が認められています。
面接の代わりに行われる“顔合わせ(職場見学)”とは
顔合わせとは、派遣社員が派遣先企業に出向き、お互いの意向を面談形式で確認するものです。
これは、派遣社員が紹介予定派遣で働く場合を除いて行われます。
一般的に顔合わせの参加者は、派遣社員と派遣先の担当者、そして派遣元の担当者の3名です。
そこでは主に、派遣社員と派遣先の担当者がコミュニケーションをとりますが、派遣元の担当者もそれをサポートする目的で同席します。
ここからは、顔合わせの目的や流れについて詳しく見ていきましょう。
顔合わせの目的
顔合わせは面接とは異なり、企業が志望者を選定するために行うものではありません。
顔合わせの目的として、具体的な2つの例を、以下でご紹介します。
派遣先が 派遣社員の適性を確認するため
派遣先企業は、面接を行えない代わりに、顔合わせによって派遣社員の適性を確認しています。
基本的に、派遣先との顔合わせが行われる場合は、派遣先が受け入れを前向きに検討している可能性が高いといえます。
しかし、顔合わせ前に派遣先が確認できるのは、事前に提出されるスキルシートの内容のみです。
そのため、実際に派遣社員の人柄や能力を見るために、顔合わせを実施するわけです。
派遣社員が業務内容を把握するため
顔合わせは、派遣社員が派遣先の業務内容を詳しく知ることができる、大事な機会です。
派遣社員は、顔合わせで初めて派遣先企業の担当者と対面し、具体的な業務内容や職場の雰囲気を把握できます。
また、疑問点などを担当者に直接確認できるので、自分がやりたい業務内容かどうかを判断しやすいでしょう。
顔合わせの一般的な流れ
派遣先企業との顔合わせは、おおよそ以下のような流れで行われます。
顔合わせの流れ
項目 | 詳細 |
1. 派遣会社の担当者と待ち合わせ | 派遣元の担当者と合流したあとに、志望する派遣先へ向かう |
2. 派遣先の担当者への自己紹介 | 顔合わせの最初に、簡単な自己紹介が求められる |
3. 業務内容・職場環境の説明 | 就業条件の対応可否を確認されることがある |
4. 質疑応答・職場見学 | 業務内容や出勤時の注意点などの疑問があれば、積極的に質問する |
顔合わせでは、基本的に派遣元の担当者と一緒に行動することになりますが、担当者に頼り過ぎず、主体性のある言動を心がけましょう。
顔合わせでよく聞かれる質問と回答例
顔合わせは面接ではないとはいえ、「質問にうまく答えられるか不安……」「質疑応答で何を聞けばよいのか迷う……」という方もいらっしゃるでしょう。
ここからは、派遣先企業からよく聞かれる質問と、反対に就業前に聞いておくべきことを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
企業側からよく聞かれる質問
派遣先企業から聞かれることが多い質問には、以下のようなものがあります。
顔合わせ中にスムーズに回答できるように、質問内容を確認したうえで、それに対する答えを事前に考えておくとよいでしょう。
自己紹介してください
派遣先企業にあらかじめ提出するスキルシートには、氏名や住所といった個人を特定する情報を記載しません。
ほとんどの企業から最初に自己紹介を求められるので、その際に氏名と簡単な職務経歴をしっかりと伝えることが重要です。
【解答例】
「初めまして、〇〇〇〇と申します。本日はよろしくお願いいたします。
私は大学卒業後、株式会社〇〇で営業アシスタントとして2年間勤務し、スケジュールや顧客情報の管理、資料作成といった業務に携わっておりました。
以上です。」
また、「本日はよろしくお願いいたします。」といったあいさつも、忘れないように注意してください。
これまでの職歴や経験について教えてください
職歴や経験について聞かれたら、虚偽なくきちんと報告しましょう。
派遣先企業の担当者は、職務経歴や保有資格などが書かれているスキルシートをもとに質問するため、その内容について聞かれることが多くなります。
しかし、自己紹介の段階で簡単に職務経歴を伝えている場合は、業務で心がけていたことや、工夫したことについて聞かれる可能性もあります。
そのようなときは、下記の例のように答えるのがおすすめです。
【解答例】
「スマートフォンのサポートセンターで、使用方法の問い合わせやクレームの電話対応を行っておりました。
業務では常にユーザーの立場で物事を考え、専門用語をできる限り使わないようにするなど、誰にでも伝わりやすい話し方を心がけました。」
このように、できる限り具体的に説明すると、業務に取り組むうえで大切にしていたことが伝わりやすくなります。
スキルや資格について教えてください
スキルや保有資格なども、前述の職務経歴とともによく質問される要素です。
業務で使用していたツールやそれに伴うスキル、また保有している資格を、どのように業務に活かせるのかを聞かれる場合もあります。
【解答例】
「前職では、Wordで見積書や社内文書を作成していました。
PowerPointで、クライアント用の企画書や顧客セミナーの資料を作成できます。
Excelのピボットテーブルを活用したデータ分析が得意です。」
上記の例のように、PCスキルをアピールしたい場合は、具体的にどのような業務で活用していたかを伝えるようにしましょう。
逆質問するなら?派遣社員から聞いておきたいこと
質疑応答は、就業前の段階で派遣先企業に直接質問ができる、貴重な時間です。
顔合わせ後は、就業開始まで派遣先に連絡をとることができないため、以下に挙げる内容はもちろん、そのほかに気になる疑問や不明点はこの時間で解消しておきましょう。
具体的な業務の進め方について
「業務内容の説明を受けたけど、いまいちイメージが湧かない……」ということもあるでしょう。
そのようなときは、業務に関して具体的に質問することをおすすめします。
【質問例】
「1日の業務の流れを、具体的に教えていただけますでしょうか?」
「業務では、どのようなツールを使用されていますか?」
1日の業務の流れや業務量、使用するツールなどについて詳しく確認することで、イメージが鮮明になり、不安のない状態で業務を開始できるはずです。
期待される役割や成果について
派遣先企業に「自分にどのような役割や成果を期待しているか」を聞いてみるのもよいでしょう。
求められている働きを把握することで、就業前の準備が容易になります。
【質問例】
「誠意を持って務めさせていただきたいと考えておりますが、御社が派遣社員に求められるのはどのようなことですか?」
また、万が一にも、「派遣先企業に求められている成果が、想定よりも高すぎる……」と感じた場合は、顔合わせ後に辞退することもできます。
派遣先とのミスマッチを防ぐ意味でも、上記のように質問してみましょう。
研修やフォロー体制について
研修期間を設けている派遣先企業の場合は、派遣元の担当者が伝えてくれるので、顔合わせ時に研修内容やフォロー体制について、具体的に質問しておくとよいでしょう。
【質問例】
「研修期間を設けていただけるとのことですが、具体的にどういった内容でしょうか?
また、何か心がけるべきことはありますか?」
しかし、時給や待遇の話には触れないように注意してください。
派遣先企業に待遇面を直接交渉することは、避けたほうがよいとされているためです。
その理由については、後ほどご説明します。
顔合わせで注意すべきNG行為
顔合わせは選考目的で行われることはありませんが、あまりに常識外れな言動を重ねてしまうと、不採用になる可能性もあります。
双方が気持ちよく顔合わせを終えられるよう、以下の行動に注意してください。
派遣先の待遇面を直接交渉しない
一般的な就職活動での面接であれば、待遇について直接交渉できる場合もあります。
しかし、派遣社員は派遣元企業と雇用契約を結んでいるため、派遣社員の給与や福利厚生などの取り決めに、派遣先が関与することはほとんどありません。
給与などの待遇面について確認したいことがある場合は後日、顔合わせ以外の場で派遣元に確認しましょう。
自分を過度にアピールしすぎない
顔合わせにおいて、自分の職務経歴やスキルに自信をもって、自己アピールすることは重要です。
しかし、採用されたい一心で、実際に達成していない実績や持っていない資格を、嘘をついてまでアピールすることはやめましょう。
スキルシートの内容や顔合わせでの発言が事実と異なる場合、就業後にトラブルを引き起こす可能性もあるので注意してください。
ビジネスマナーを軽視しない
顔合わせは面接ではないものの、最低限のビジネスマナーが身についていない場合は、不採用になる可能性もあります。
派遣先企業は、職場にいると不快になる人や、取引先に失礼な言動をとるおそれがある人を雇ってはくれません。
TPOをわきまえたあいさつや言葉遣い、服装といった社会人としてのマナーを守りましょう。
顔合わせの際に押さえておきたいポイント
ここまでは、派遣先企業との顔合わせで避けるべき行動をお伝えしました。
顔合わせは面接とは違い、選考を目的に行われるものではありませんが、いくつかのポイントを意識すると、顔合わせで好印象を残すことができるでしょう。
本命の派遣先との顔合わせでは、ぜひ以下のポイントに注目してください。
事前準備を入念に行う
派遣先企業との顔合わせが決定したら、事前にしっかりと準備して臨みましょう。
顔合わせをスムーズに行うための事前準備
- 派遣会社の担当者と打ち合わせる
- 過去の職歴やスキルを整理しておく
- 想定される質問への回答を準備する
顔合わせ決定後に最初に行うことは、派遣元の担当者との打ち合わせです。
自分が求める労働条件の詳細や派遣先への要望などを、顔合わせ時に担当者へ共有しておくと、誤認識やミスマッチを防ぐことができます。
また、質問にスムーズに答えられるように、スキルシートに書いた内容の整理や、予想される質問の回答をまとめておくなど、事前に準備しておきましょう。
清潔感のある服装・身だしなみを心がける
顔合わせに出席する際には、礼儀正しく清潔感のある服装・身だしなみを意識してください。
派遣先企業からの服装指定が特にない限り、面接と同じくスーツを着用するのが一般的です。
オフィスカジュアルでも問題ないかどうかが気になる場合は、派遣元から派遣先に確認してもらいましょう。
また、髪型やメイク、小物などもビジネスシーンにふさわしいものを選びたいところです。
「安心して仕事を任せられる人」というイメージをもってもらえるように、スーツやハンカチにシワがないか、頭髪の乱れがないかを確認することが大切です。
質問を積極的にする姿勢を見せる
派遣先企業から「何か質問はありますか?」と聞かれたときに何も質問ができないと、意欲や興味がないと思われてしまう可能性があります。
積極性を見せるために、少なくとも1回は質問することをおすすめします。
事前に質問をいくつか考えておけば、用意していた質問の答えが、顔合わせ中のやり取りで先に説明された場合にも、落ち着いて質問できます。
このような事態にも対応できるように、事前に複数の質問を準備して、意欲的な姿勢を見せましょう。
顔合わせで派遣先と合わなかった場合の対応
派遣先企業の顔合わせ後に、労働条件の食い違いや職場のイメージ違いなどによって、その派遣先での就業を断りたい場合もあるかもしれません。
そのような場合は、辞退しても問題ありませんが、以下のポイントを意識して断るようにしましょう。
断る際のポイントと伝え方
顔合わせ後に仕事を断る場合は、明確な辞退理由を派遣元の担当者へ伝えましょう。
理由なく断ってしまうと、どのような仕事なら就業可能なのかが派遣元で判断できず、仕事を紹介してもらえる機会が減る可能性があります。
断る際にはまず、謝罪の気持ちを伝え、辞退理由を具体的に説明しましょう。
そして、「引き続き派遣社員として仕事を探したい」という意思も忘れずに伝えてください。
条件交渉が可能なケースも
もし、仕事を給与面のみを理由に辞退する場合は、担当者に相談してみましょう。
派遣会社側が給与を低めに設定しているケースであれば、交渉の余地があるかもしれません。
特に、派遣先企業が派遣社員に対して好印象をもっていれば、条件交渉できる可能性も上がるでしょう。
派遣に面接はないものの、安心して顔合わせに臨むための事前準備は必要
本記事では、派遣社員の面接が実施されない理由や、顔合わせの際に気をつけたいポイントについて解説しました。
派遣社員の面接は労働派遣法で禁止されているため、代わりに顔合わせが行われます。
顔合わせは、派遣先企業が派遣社員の受け入れに前向きな場合に実施されますが、それでも最低限のビジネスマナーや身だしなみ、質疑応答の準備は必要です。
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