派遣社員として働くことを検討する際、交通費がどのように支給されるのか疑問に思うかもしれません。
とくに時給制の働き方では、通勤にかかる費用が手取り額に直結するため、事前に正確な仕組みを知っておくことが欠かせません。
本記事では、交通費支給の法的な背景や計算方法にくわえ、税金や社会保険料へ与える影響まで解説します。
支給されないケースや実務上の注意点も取り上げていますので、これから派遣の仕事を探す際の参考にしてください。
目次
派遣の交通費は法律の改正により支給が原則に
派遣社員に対する交通費の扱いは、労働者派遣法の改正によって見直され、現在では支給が原則となっています。
法的な背景として知っておきたいことは、以下の2つです。
- 同一労働同一賃金により不合理な待遇差を防ぐ
- 交通費を決定する2つの方式を把握する
どのようなルールで派遣社員の交通費が定められているのか、制度の概要を順に見ていきましょう。
同一労働同一賃金により不合理な待遇差を防ぐ
改正労働者派遣法により、同一労働同一賃金の原則が導入されました。
この制度は、同じ職場で働く正社員と派遣社員の間にある不合理な待遇差をなくすことを目的としています。
以前は派遣社員に対して交通費が支給されないケースも珍しくありませんでしたが、法改正によって正社員と同等の通勤手当を支給することが求められるようになりました。
基本給や賞与にくわえ、交通費といった各種手当においても公平な扱いが求められるようになったため、現在では派遣社員も安心して働きやすい環境が整いつつあります。
交通費を決定する2つの方式を把握する
派遣社員の交通費を決める方式には、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の2種類があります。
派遣先均等・均衡方式は、就業先である派遣先の正社員の待遇にあわせて交通費や賃金を決定する仕組みです。
一方の労使協定方式は、派遣会社と従業員の間で結ばれた協定にもとづき、同じ地域で似た業務に就く一般労働者の平均的な水準と同等の待遇を確保します。
多くの派遣会社では、派遣先が変わっても賃金水準が維持されやすい労使協定方式を採用しており、交通費の支給においても安定した基準が設けられています。
派遣の交通費を負担する企業と手取りへの影響
実際に交通費を支払う企業や、その資金の出どころに疑問を感じる方も多いはずです。
支給元と費用の出どころを、2つの視点から整理します。
- 派遣会社が支給主体となる
- 派遣先企業が原資を負担する
交通費の出どころと各企業の役割を理解すると、派遣という事業の仕組みを把握しやすくなります。
派遣会社が支給主体となる
派遣社員に対して交通費を直接支払うのは、雇用契約を結んでいる派遣会社です。
就業先である派遣先企業はあくまで日々の業務を指示する立場にすぎず、給与や交通費の直接的な支払い義務はありません。
そのため、毎日の通勤にかかった費用を申請・受け取る手続きは、すべて登録している派遣会社をとおして行うことになります。
支給日は給与と同じタイミングになるのが一般的ですが、申請の締め切り日や詳しいルールは派遣会社ごとに異なります。
あらかじめ雇用契約書を確認し、申請漏れで支給が遅れないように気をつけましょう。
派遣先企業が原資を負担する
交通費を実際に支払う主体は派遣会社ですが、その原資となるお金は派遣先企業が負担しているケースが大半です。
派遣先企業は、自社に派遣社員を受け入れるにあたって派遣料金を支払います。
この派遣料金の中に、基本給や社会保険料とあわせて交通費の相当額があらかじめ組み込まれているのが特徴です。
結果として派遣先企業が間接的に負担する形となり、三者の間で派遣の仕組みが成り立っています。
この交通費は社会保険料の計算に含まれたり、支給方法によって課税対象になったりするため、手取り額にも影響を与えます。
派遣の交通費を支給する3つの方法
交通費の受け取り方にはいくつかの形式があり、働き方や派遣会社との契約内容によって扱いが異なります。
一般的に採用されている3つの支給パターンを確認します。
- 実際にかかった費用を受け取る
- あらかじめ決められた一定額を受け取る
- 時給に交通費を含めて受け取る
詳しく見ていきましょう。
実際にかかった費用を受け取る
一般的な支給方法は、自宅から就業先までの通勤で実際にかかった金額を受け取る実費支給です。
電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合、安く合理的な経路で計算された運賃が支払われます。
毎日出社する働き方では1ヶ月分の定期代として支給され、週数日の勤務であれば出勤日数に応じた日割りの往復運賃が支払われる仕組みです。
通勤にかかる費用を自己負担する心配がないため、遠方の職場でも通いやすく、現在では多くの派遣会社で実費支給が採用されています。
あらかじめ決められた一定額を受け取る
月額1万円まで、あるいは1日あたり500円までといったように、あらかじめ上限額や支給額が決められている定額支給のケースもあります。
この方法では、実際の交通費が設定された上限額を下回っていれば全額補われますが、上限を超過した分については自己負担となります。
通勤距離が長く交通費が高額になる職場を選ぶと、毎月の自己負担額が膨らんで実質的な手取りが減ってしまうかもしれません。
求人に応募する際は、交通費の上限がいくらなのかを確認し、自宅から通った場合に持ち出しが発生しないか見極めてください。
時給に交通費を含めて受け取る
交通費が別途支給されるのではなく、はじめから時給の中に含まれている形もあります。
一見すると時給が高く設定されているように見えるため魅力的に感じますが、税金の面で不利になりやすいことに注意しなければなりません。
本来、一定額までの交通費は非課税になりますが、時給に含まれていると全額が給与所得として扱われ、所得税が高くなってしまいます。
遠方から通うほど実質的な時給が下がるのもデメリットです。
見た目の時給額に惑わされず、交通費が別途支給される条件と比較して手取り額を冷静に計算しましょう。
派遣の交通費を計算する方法
交通費の上限額や定額支給額がどのような基準で決められているのか、具体的な金額を計算する際の指標として以下の2つを解説します。
- 一般通勤手当の基準額を把握する
- 定額支給や上限設定時の計算式にあてはめる
それぞれ見ていきましょう。
一般通勤手当の基準額を把握する
派遣社員の交通費を計算する際、国が算出した一般通勤手当の額が基準として用いられます。
労使協定方式の派遣会社では、一般労働者の平均的な通勤費用と同等以上の額を支給しなければなりません。
厚生労働省の局長通達によれば、一般通勤手当の基準額は2026年度(令和8年度)から時給換算「79円」に引き上げられます。
実際の支給には定額支給のほか、距離に応じた「実費支給」も認められています。
参照元:令和8年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等 に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する 一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について
定額支給や上限設定時の計算式にあてはめる
月額の定額支給や、実費支給に上限額を設ける場合は、時給換算の基準額を下回らないよう具体的な金額が算出されます。
一般的な月平均所定労働時間の換算式「時給換算額×1日の所定労働時間×週の労働日数×52週÷12ヶ月」にあてはめてみましょう。
2026年度の基準額79円を用いて、1日8時間・週5日のフルタイム勤務を想定して計算すると、月額換算で約1万3,693円が目安となります。
提示された交通費の上限額や定額支給額がこの目安を下回る場合は、要件を満たしていない可能性があります。
そのため、派遣会社の担当者に確認しましょう。
派遣社員の交通費支給に関する注意点
勤務先とのトラブルを防ぐためにも、事前に確認しておきたいポイントは以下3つです。
- 交通費支給による税金や社会保険料(扶養)への影響に注意する
- 支給方法や上限額などの条件を事前に確認する
- もっとも経済的で合理的な通勤経路を申請する
条件をあらかじめ把握しておくことで、働き始めてから思わぬ金銭的な負担を抱える事態を避けられます。
交通費支給による税金や社会保険料(扶養)への影響に注意する
電車やバスを利用した実費支給などの場合、もっとも経済的かつ合理的な経路であれば月額15万円まで所得税が非課税になります。
一方で、社会保険料の計算は交通費も含めた総支給額が基準となります。
とくに配偶者の扶養内で働く方は、税金と社会保険の違いを理解しておかなければなりません。
税法上の「103万円の壁」には非課税限度額内の交通費は含まれない一方、社会保険の「130万円の壁」には交通費が含まれます。
遠方から通って交通費が高くなると、意図せず扶養から外れてしまうおそれがあるため気をつけてください。
参照元:国税庁「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当」
支給方法や上限額などの条件を事前に確認する
仕事を始める前に、実費支給なのか定額支給なのか、電車遅延時のバス利用は認められるか、在宅勤務日の扱いはどうなるかなど、ルールを確認してください。
月額上限が設定されている場合、自分の通勤経路にかかる費用が上限内に収まるかどうかも確認しましょう。
不明な点があれば面談の段階で担当者に質問し、納得したうえで雇用契約を結ぶことが、勤務開始後の金銭的なトラブルを防ぐことにつながります。
もっとも経済的で合理的な通勤経路を申請する
派遣会社に交通費を申請する際は、安くて合理的な通勤経路を選ぶのが基本です。
自分が普段利用している駅よりも、地図上で最寄り駅と判定される別の路線のほうが交通費が安い場合、最安ルートでの支給額が適用されるケースが少なくありません。
乗り換えの手間などを理由に遠回りで高い経路を申請しても、派遣会社から却下されて差額が自己負担になるおそれがあります。
もし特別な事情があって最寄り駅以外のルートを使いたい場合は、申請前に派遣会社の担当者へ相談し、例外として認められるか交渉してみましょう。
交通費が支給されないケースと理由
法改正によって交通費の支給が原則となったものの、どのような状況でも支払われるわけではありません。
支給対象外となるのは、以下3つのケースです。
- 自転車や徒歩で通勤している
- 車通勤で一定の距離に満たない
- 派遣先の正社員に交通費の支給がない
なぜ支給されないのか、その理由や基準を知っておくと、納得して仕事を選びやすくなります。
自転車や徒歩で通勤している
自宅から就業先まで自転車や徒歩で通っている場合、交通費は支給されないのが一般的です。
電車やバスのように明確な運賃が発生せず、実費を客観的に算出するのが難しいためです。
ただし、駐輪場を借りる費用については、領収書を提出することで経費として認めてもらえる派遣会社も一部あります。
雨の日だけバスを利用するといった不定期な乗り物通勤については、事前の申請があれば日割りで交通費が支払われるケースもあります。
自転車や徒歩の通勤を想定している方は、悪天候時のルールも含めて確認しておくと安心です。
車通勤で一定の距離に満たない
地方や工場勤務などで車通勤をする場合、ガソリン代として交通費が支払われますが、自宅から職場までの距離によっては支給対象外となります。
多くの派遣会社では、通勤距離が片道2km未満の近距離であれば、交通費を支払わないという規定を設けています。
これは、2km未満であれば自転車や徒歩でも通勤可能であると判断されるためです。
規定の距離に満たない場合は、車を使うかどうかにかかわらずガソリン代の補助が出ません。
近所の職場を選ぶ際は、交通費がゼロになる可能性を考慮したうえで手取り額を計算しましょう。
派遣先の正社員に交通費の支給がない
派遣先均等・均衡方式を採用している派遣会社の場合、就業先である企業側の制度が直接影響します。
もし派遣先の正社員に対して交通費を支給しないという規定がある場合、同じ職場で働く派遣社員にも交通費は支払われません。
同一労働同一賃金は正社員との格差をなくすためのルールであるため、比較対象となる正社員がゼロであれば、派遣社員もゼロとなってしまうからです。
このような事態を避けるためにも、求人票で交通費の有無を確認するとともに、派遣会社が労使協定方式を採用しているかどうかも確認しましょう。
まとめ:派遣の交通費の仕組みを理解して自分に合う働き方を見つける
派遣の交通費の仕組みは、支給方法や計算の基準を正しく理解したうえで就業先を選ぶことが大切です。
ホットスタッフでは、皆様が安心して就業できる職場環境を提供するため、きめ細やかなフォロー体制を整えています。
登録時にはカウンセリング形式の面談を実施しており、お仕事に関するお悩みや、交通費などの派遣に関する疑問について、専任の担当者が丁寧にお答えします。
具体的な業務内容や職場の雰囲気もお伝えするため、派遣がはじめての方でも安心です。
就業開始当日は勤務先に同行し、その後も定期的な職場訪問やメール・電話でのマンツーマンフォローを行いますので、お気軽にご相談ください。