派遣の基礎知識

派遣契約とは?種類や業務委託との違い、契約内容を解説

派遣会社と派遣先企業が取引を行う際は、法律に基づいて派遣契約を結ぶ必要があります。

この手続きを円滑に進めるには、契約の概要にくわえ、具体的な手順や注意点などをあらかじめ把握しておくことが重要です。

そこで本記事では、派遣契約の内容や必須の記載事項をお伝えしたのち、契約の進め方や締結時に意識したいことなどをご紹介します。

これから派遣契約を結ぶ、派遣会社や派遣先企業のご担当者様はぜひ参考にしてください。

派遣契約とは?

派遣契約とは、派遣会社と派遣先企業が結ぶ、トラブルの防止や就業条件の合意などを目的とした契約のことです。

そもそも“派遣”という働き方は、派遣会社と派遣先企業、派遣労働者の3者間の契約によって成り立っています。
具体的には、派遣会社と派遣先企業が結ぶ“派遣契約”、そして派遣会社と派遣労働者が結ぶ“雇用契約”に基づいて業務が行われます。

これらの契約は、労働者派遣法第26条および第34条によって義務づけられているため、派遣事業を行ううえで必ず締結しなければなりません。

参照元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第26条・第34条」

派遣契約の種類

派遣契約には“基本契約”と“個別契約”の2種類があり、それぞれ役割が異なります。
以下で両者の違いを見ていきましょう。

基本契約

基本契約は、派遣事業におけるトラブルを防止するための契約で、主に以下の項目について取り決めます。

【基本契約の記載事項】

  • 契約料の設定方法や計算方法、支払い方法
  • 雇用安定措置
  • 個人情報や機密情報の保護
  • 損害賠償
  • 契約の解除条件
  • 労働者派遣法および関係法令の遵守

基本契約の締結自体は、法律で義務づけられているわけではありません。
とはいえ、この契約を結べば契約料の考え方や責任の所在などが明らかになり、後述の個別契約の内容を整理しやすくなるため、締結するのが一般的です。

個別契約

基本契約に対して、個別契約は派遣労働者一人ひとりの就業条件を定めるための契約です。
労働者派遣法第26条によって締結が義務づけられており、契約時には同法で定められた次の項目について取り決める必要があります。

【個別契約の記載事項】

  • 業務内容
  • 派遣労働者の人数
  • 派遣先企業の名称や所在地
  • 派遣労働者の指揮命令者
  • 派遣期間および就業の開始日
  • 就業時間および休憩時間
  • 安全や衛生
  • 派遣労働者からの苦情処理
  • 雇用の安定
  • 業務に伴う責任の程度
  • 派遣会社の責任者
  • 派遣先企業の責任者
  • 就業日外労働および時間外労働
  • 紹介予定派遣に関する事項
  • その他厚生労働省令で定められている就業を適正に行うための措置

個別契約を結ぶ際は、上記の項目を漏れなく記載したのち、“派遣先管理台帳”とよばれる書類を作成・保管してください。
派遣先管理台帳については、本記事の後半で詳しくお伝えします。

参照元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第26条」

派遣契約に関連する法律

派遣契約の締結時は、“労働者派遣法”と“労働契約法”を遵守しなければなりません。
本項では、それぞれの概要をご紹介します。

労働者派遣法

労働者派遣法は、派遣労働者の保護や派遣事業の適正な運営を推進するための法律です。
同法で特に押さえておきたい項目としては、以下の内容が挙げられます。

【労働者派遣法の特に重要な項目】

項目内容
同一労働同一賃金派遣労働者に支払う賃金は、同じ業務に従事する正規雇用労働者の賃金と同等でなければならない
日雇い派遣の原則禁止派遣労働者を雇用する際は、原則として31日以上受け入れなければならない
(従事する業務の内容や労働者の年齢によっては例外もある)
派遣労働者を特定する行為の禁止派遣に先立ち、書類選考や面接など、派遣労働者を特定する行為を行ってはならない
二重派遣の禁止派遣会社から受け入れた労働者を、別の企業に派遣してはならない
派遣期間の制限派遣先企業は、原則として同一の労働者を3年以上受け入れてはならない
離職後1年以内の派遣労働者の受け入れ禁止同一の企業において、原則として離職後1年以内の労働者を派遣労働者として受け入れてはならない
(60歳以上の定年退職者は例外)

上記の項目に違反すると、企業名の公表や罰金といった行政処分を下される可能性があります。
派遣契約を結ぶ際は、法律に違反している項目がないかどうかを必ずご確認ください。

参照元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)」

労働契約法

労働契約法とは、派遣先企業と派遣労働者のあいだで起こり得る“個別労働関係紛争”の防止を目的とした法律のことです。
同法の項目は以下の通りです。

【労働契約法の項目】

項目内容
総則労働契約の基本原則や安全配慮義務など
労働契約の成立労働契約が成立する条件や就業条件の合意など
労働契約の変更労働契約の内容を変更できる条件や、その手続きの方法など
労働契約の継続出向や懲戒など
労働契約の終了解雇の条件
有期労働契約契約期間の更新の方法や無期転換ルール、雇止め法理など
雑則有期労働契約の項で定められた条件の例外となるケース

刑事罰や損害賠償責任の対象とならないためにも、派遣労働者を迎え入れる前に労働契約法の内容をきちんと把握しておきましょう。

参照元:厚生労働省「労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)」

派遣契約と似ている契約との違い

派遣契約は、同じく外部のリソースを活用する取引である“業務委託契約”や“準委任契約”と混同されがちですが、その内容は明確に異なります。
それぞれの違いを知らずに契約を進めると、主従関係や責任の所在などを巡るトラブルに発展しかねません。

そこで本項では、派遣契約と業務委託契約・準委任契約とのあいだに、どのような相違点があるのかを解説します。

業務委託契約

業務委託契約とは、特定の業務を外部の企業や個人に委託する契約のことです。
派遣契約との主な違いとしては、以下の要素が挙げられます。

【派遣契約と業務委託契約の主な違い】

 派遣契約業務委託契約
雇用主派遣会社なし
指揮命令権の所在派遣先企業なし
賃金が生じる対象労働力業務の遂行もしくは成果物
賃金の形式給与報酬

業務委託契約では、委任者と受任者のあいだに主従関係がないため、雇用主や指揮命令権の概念がありません
この点を理解せずに、労働者に対して業務の指示を行うと、“偽装請負”と見なされて罰則を受ける可能性があります。

労働者に勤務時間や業務の進め方、社内ルールの遵守などを直接指示したい場合は、必ず派遣契約を結んでください。

準委任契約

準委任契約は業務委託契約の一種で、法律行為を含まない業務を外部に委託する取引です。
派遣契約との違いは、前項の表にある業務委託契約の内容と同様です。

なお、準委任契約は業務の遂行に対して報酬を支払う“履行割合型”と、提出された成果物に対して報酬を支払う“成果完成型”の2種類に分けられます。
前者の場合、受け入れた労働者が期待する成果を挙げなかったとしても、責任を問えない点には注意が必要です。

【派遣先企業向け】派遣契約を締結する際の流れ

続いて、基本契約と個別契約の両方を結ぶ際の手順を、派遣先企業側の目線でお伝えします。
締結の手続きを円滑に進めるためにも、ぜひ参考にしてください。

【派遣契約を締結するまでの流れ】

  • ステップ①基本契約を結ぶ
  • ステップ②事務所抵触日を通知する
  • ステップ③個別契約を結ぶ
  • ステップ④派遣先管理台帳を作成・保管する

ステップ①基本契約を結ぶ

まずは、派遣会社と基本契約を締結します。
これは法律上の義務ではないものの、契約料や損害賠償などのルールを明文化することで派遣契約を滞りなく進められるようになるため、多くの派遣先企業が締結しています。

取引上のトラブルを防止する役割もあるので、特別な事情がない限りは基本契約を締結しましょう。

ステップ②事務所抵触日を通知する

基本契約の締結後は、派遣会社に対して事務所抵触日の通知を行います。

事務所抵触日とは、派遣期間満了日の翌日のことです。
労働者派遣法によって通知が義務づけられており、この日を迎えると、原則として派遣労働者の受け入れは終了となります。

派遣労働者の継続的な受け入れを希望する場合は、労働組合員の過半数の同意を集めることで事務所抵触日の変更が可能です。
ただし、事務所抵触日には“個人単位の抵触日”と“事務所単位の抵触日”の2種類があり、変更できるのは後者に限られます。

ステップ③個別契約を結ぶ

次に、基本契約の内容に基づいて個別契約を結びます。
個別契約の締結は労働者派遣法によって義務づけられているため、同法第26条に記載の項目について抜かりなく取り決める必要があります。

参照元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第26条」

ステップ④派遣先管理台帳を作成・保管する

個別契約を締結したら、派遣先管理台帳を作成・保管します。

派遣先管理台帳は、派遣労働者の就業状況を正確に把握するための書類です。
労働者派遣法第42条によって、作成ならびに3年間の保管が義務づけられています。

また、派遣先管理台帳に記載した内容は、原則として派遣会社に通知しなければなりません。

参照元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第42条」

【派遣先企業向け】派遣契約を締結する際の注意点

最後に、派遣先企業の担当者様に向けて、派遣契約を結ぶ際に注意したい5つのポイントをお伝えします。
派遣契約によって思わぬ不利益を被らないよう、一つずつ確認していきましょう。

【派遣先企業向け】派遣契約の締結時に注意したいこと

  • 認可を受けている派遣会社かどうかを確認する
  • 法律に違反していないかどうかを確かめる
  • 契約書をなくさずに保管する
  • 中途解約は原則できないことを押さえておく
  • 派遣労働者に依頼できる業務内容を把握しておく

認可を受けている派遣会社かどうかを確認する

派遣契約を締結する前に、取引を検討している派遣会社の“労働者派遣事業許可番号”の有無を確認してください。

企業が派遣事業を行う際は、厚生労働大臣の認可を受けて、労働者派遣事業許可番号を取得しなければなりません。
これは労働者派遣法第5条で定められており、番号を持たずに派遣事業を行った企業は行政処分の対象となります。

もし無資格の企業と派遣契約を結んだことが発覚すると、自社も責任を負わされる可能性があります。
こうしたリスクを避けるには、派遣会社のホームページで労働者派遣事業許可番号の有無を確認することが大切です。

参照元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第5条」

法律に違反していないかどうかを確かめる

派遣契約を結ぶ際は、労働者派遣法と労働契約法を遵守する必要があります。
違反すると罰則を受けることとなるため、これらの法律の内容をきちんと理解したうえで、必要事項に漏れがないかを入念に確認しましょう。

もし「自社だけで法律違反をチェックできるか不安だ……」という場合は、法律の専門家にリーガルチェックを依頼するのも一つの手です。

労働者派遣契約書をなくさずに保管する

派遣契約の締結後は、労働者派遣契約書を厳重に保管することをおすすめします。

労働者派遣契約書とは、基本契約や個別契約の内容をまとめた書類のことです。
作成は義務ではないものの、トラブル防止や契約の円滑な進行といった観点から、多くの派遣先企業が作成・保管しています。

作成後は、派遣先管理台帳とあわせて保管しておくとよいでしょう。

中途解約は原則できないことを押さえておく

派遣契約は、原則として中途解約できない点にも注意が必要です。
実際に、労働者派遣法第29条には以下の記載があります。

(労働者派遣契約の解除に当たつて講ずべき措置)
第二十九条の二 労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。

引用元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第29条」

派遣契約を中途解約するには、社会通念上の正当な理由がなければなりません。
具体的には、「自社が倒産の危機に陥っている」「派遣労働者に明らかな問題がある」といった場合に中途解約を認められる可能性があります。

ただし、中途解約が認められたとしても、状況次第では派遣会社から損害賠償を請求されるリスクがあることも念頭に置いておきましょう。

派遣労働者に依頼できる業務内容を把握しておく

派遣労働者に依頼できる業務に制限があることも、派遣契約における注意点として挙げられます。

派遣先企業が派遣労働者に依頼できるのは、個別契約で定めた業務のみです。
それ以外の業務に従事させることは、労働者派遣法第39条で禁じられています。

もし個別契約で定めていない業務を任せたいのであれば、必ず派遣会社に相談したうえで、派遣労働者からの合意を得てから依頼してください。

参照元:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第39条」

派遣契約を結ぶ際は、業務委託契約との違いや関連する法律の内容を理解しておくことが重要

派遣契約とは、派遣会社と派遣先企業が結ぶ、取引上のトラブルの防止や就業条件の合意などを目的とした契約のことです。
基本契約と個別契約の2種類があり、後者は労働者派遣法第26条によって締結が義務づけられています。
混同されがちな業務委託契約・準委任契約との違いを押さえたうえで、関連する法律への理解を深め、派遣契約を円滑に進めましょう。

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この記事の監修者

柴田 直樹(しばた なおき)

  • 株式会社ホットスタッフ伊勢崎
  • 株式会社ホットスタッフ太田 代表取締役
  • ホットスタッフグループ 取締役

<プロフィール>
2010年 株式会社ホットスタッフに入社。愛知県の4拠点を経て2017年 ホットスタッフ伊勢崎 を開設。2019年 ホットスタッフグループ 取締役に就任。

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